NFTの意味
ここ数年でよく耳にすることが増えたNFTとはNon-Fungible Token(ノンファンジブル・トークン)の頭文字です。ファンジブルとは「代替=他のもので代えること」、ノンは「不可能=できない」なのでノンファンジブルは「代替不可能な、非代替性の」という意味になります。「世界でただ一つの」と言い換えることもできます。
またトークンとはブロックチェーン技術を用いて発行された暗号資産(仮想通貨)などを指します。これらを合わせるとNFTとは「非代替性トークン」という意味になります。
暗号資産とはインターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済に関する法律」において、次の三つの性質を持つものと定義されています。
- 不特定者に対して代金の支払いなどに使用でき、法定通貨と相互に交換が可能
- 電子的に記録されており、移転が可能
- 法定通貨または法定通貨建ての資産ではない
※暗号資産が仮想通貨と記載されていることも多々ありますが、暗号資産は資金決算法の改正(2020年)により「仮想通貨」から「暗号資産」に呼称変更されました。そのため本記事では暗号資産という表記で統一しております。
上記の性質を持ち、インターネット上で取引可能なデジタル通貨のことを暗号資産と呼びます。NFTはその内の一つです。NFTは「ブロックチェーン技術」を用いたデジタル資産です。ブロックチェーン技術とはネットワーク上の取引記録を暗号技術を用いて複数の場所で管理・処理する、所謂安全性の高いデータの記録技術のことを指します。
このブロックチェーン技術を用いることで、NFTという暗号資産は非代替性のある「世界でただ一つのデジタル資産」であると証明することができます。
NFTとは
「世界でただ一つのデジタル資産」であると証明することができる暗号資産
NFTは何がすごいのか
ここまでNFTが注目されることとなった主な要因は二つです。一つ目は、NFTはこれまで難しかったデジタルデータの「唯一無二の価値を証明できる点」です。二つ目は、「新たな投資・収益を得る方法である点」です。
一つ目のデジタルデータの「唯一無二の価値を証明できる点」については、まず従来のデジタルデータの状況からご説明します。従来のデジタルデータ(イラスト・写真・映画・音楽など)は複製や改ざんや二次利用がいとも簡単にできてしまいます。一度インターネット上にアップロードされたデジタルデータは著作権を持つクリエイター以外にも簡単に利用することができてしまう仕組みでした。
しかし、ブロックチェーン技術を用いて記録・取引されたデジタルデータのNFTは、そのデータがオリジナルの世界でただ一つのデジタルデータであると証明することが可能となります。これまで複製や改ざんなどが容易にできてしまっていたデジタルデータに関して、不正を行えばすぐにバレてしまう仕組みとなりました。
唯一無二の価値を持つデジタルデータであると証明することができるようになったからこそ、インターネット上での金銭の取引などの不正を行うことが困難になったり、デジタルアートや音楽分野で活躍するアーティストの権利を保護することが可能になったりと、デジタル資産を安全に取引することができるようになりました。
二つ目の「新たな投資・収益を得る方法である点」についてご説明します。まずNFT関連の暗号資産に投資することで収益を得ることが可能です。NFT関連の暗号資産とは、数千以上の銘柄がある暗号資産のうち、特定のNFTプラットフォームやNFTゲーム内で使用するために存在する暗号資産です。
一般的にプラットフォームやゲームの知名度やこれらの中で使用するためのNFTの需要が高まると、関連する銘柄の暗号資産の価値も上がります。株式投資と類似するところもありますが、将来性のある値上がりしそうなNFTに関連する銘柄を、事前に取引所で購入しておいて、値上がりしてから売却して価格差益を狙っていくことでNFT投資が可能です。
また投資だけでなく、自分でデジタル作品をNFTマーケットに出品して収益を得ることもできます。デジタルアートや音楽などの作品の制作が可能であれば、自ら出品して売却益を得ることができますが、もし制作が難しい場合は作品を外注して出品・販売することも可能です。
それだけでなくNFTマーケットで購入したNFTを、値上がりしたタイミングで売却することによって価格差益を得るということも収益化の手段の一つです。NFTはその時々によって価値の変動が起きるため、購入金額を売却金額が上回った場合は、その時に売却することで利益を出すことが可能となります。
NFTのすごいところ
①唯一無二の価値を証明できる
②NFTを活用することにより収益を出すことができる
NFTの仕組み
NFTを活用する際には押さえておきたい仕組みをご紹介します。
①改ざん・偽装を防ぐ仕組み
ブロックチェーン技術を基盤にしているNFTは改ざんや不正を防ぐことができる仕組みとなっています。データの管理者がインターネット上に複数存在しているので、従来の中央主権型のサーバー方式とは異なりハッキングやサーバーダウンのリスクが低くなります。一か所にデータが集約されている場合はそこを攻撃すればデータの流出や改ざんを狙うことができます。しかしブロックチェーンはデータを複数個所で管理しているので、仮に何かトラブルがあったとしても、他のコンピューターが稼働しているため被害を最小限に押さえることができます。
またブロックチェーンは「分散型台帳」とも呼ばれます。複数のユーザーが同じ台帳(データ)を管理・共有することができるため、仮に偽装や改ざんを行った場合はすぐに発見されてしまいます。ブロックチェーン上には過去の取引記録が全て蓄積されています。誰がいつ何の情報を更新したのかが、マーケットプレイス上の全ての参加者に閲覧可能とされているため、改ざんなどの不正を働いた場合は即発見ができるということになります。このように改ざんや偽装を未然に防ぎ、安全に利用できるのがNFTの土台となるブロックチェーン技術です。
②別のプラットフォームでも利用することができる仕組み
共通のプラットフォームや規格で作られたNFTは、それに該当する場合に別のプラットフォームやゲームなどでも利用可能となります。あるゲームのキャラクターやアイテムを別のゲームでも使うことができるということです。従来のインターネットゲームであれば、サービスの終了と同時にゲームデータは消失してしまいますが、他のゲームに移行することで使用し続けることができるようになります。
③二次流通でもクリエイターに収益が還元される仕組み
従来の二次流通の場合は、クリエイターでなく転売者しか収益を得ることができません。しかし、NFTでは出品時に収益の一部をクリエイターに還元するように設定することが可能となりました。転売を繰り返すことによってクリエイターが得ることができる収益も増えていくため、これまでクリエイターからするとメリットがあまりなかった転売も、活用することで利益拡大に繋がるものとなりました。
NFTの仕組み
①ブロックチェーン技術により安全に使える仕組み
②別のプラットフォームでも利用可能な仕組み
③二次流通でも収益が出せる仕組み
NFTの歴史
2017年に登場したNFTは2021年から人気が高まり、今では世界中で活用されています。注目されるきっかけとなったポイントをご紹介します。
①ブロックチェーンゲームCryptoKitties(クリプトキティズ)の登場
猫を育成するゲームで、イーサリアムのブロックチェーン技術が利用されています。猫を育成・交配させたり、暗号資産で猫を売買したりすることができます。NFTゲームのため、一匹一匹の猫には固有の価値があり、外見や価格などが異なります。親の特徴を引き継がない突然変異体の猫はレア度が非常に高く、売買時に高値で取引することが可能です。
このゲームがきっかけでNFTは大きな注目を集めることとなりました。後発のゲームも多く発表され、今ではNFTゲームは世界中で楽しまれています。
②ジャック・ドーシー氏のツイートで3億
CryptoKittiesから少し期間が空きますが、2021年3月にTwitter創業者のジャック・ドーシー氏が過去のツイートをオークションに出品し、それが291万ドル(日本円にして3億円以上)という高額で落札されたというニュースで再びNFTは注目の的となりました。2017年に登場したNFTですが、人気が高まったのは実は2021年に入ってからのこととなります。
③BeepleのNFTアートが約75億円で落札
続いて大きな話題となったのはデジタルアーティストのBeeple(ビープル)のアート作品「TheFirst 5000 Days」です。このデジタルアート作品は過去最高の約6900万ドル(約75億円)で落札されました。このニュースに衝撃を覚えた人も多いのではないでしょうか。5000枚のデジタルアートを一つにコラージュした作品はNFTアートの注目度を一気に上げるきっかけとなりました。
NFTの歴史
①NFTの登場:CryptoKitties
②NFTが注目されるきっかけ:ジャック・ドーシー氏のツイート
③NFTが人気となったきっかけ:BeepleのNFTアート
NFTの特徴
①代替が不可能である
NFTはブロックチェーン技術を利用した代替が不可能なデジタルデータです。そのためそのNFTコンテンツが唯一無二の価値を持つと証明することができます。この唯一性の証明こそ最大の特徴だともいえます。
一方で暗号資産は他と交換することができます。考え方は法定通貨と同様で、例えばA氏が所有している1万円札とB氏が所有している1万円札は価値が等しいため、交換可能です。同じくA氏が所有している暗号資産と同数の暗号資産をB氏と交換しても価値が変わらないため、何ら問題はありません。
しかしNFTが発行されたデジタル資産の場合は、固有の価値を持っているため、例えばA氏が所有しているアート作品とB氏が所有しているアート作品がどれだけ類似しているものだったとしても、全くの別物になります。何故ならブロックチェーン上に記録されている情報が異なるからです。そのため、この二つを等価交換することはできません。NFTは暗号資産とは違い、代替が不可能な唯一無二の価値を持ったデジタル資産となっています。
②安全・安心な取引を可能に
マーケットプレイス上の全参加者に取引記録が開示されている点、取引記録は複数のコンピューターによって管理・処理されている点から改ざんや偽装などの不正を行うことは非常に困難とされています。そのためNFT取引は、従来のインターネット取引と比較すると安全性が高いといわれます。
③法的整備が不十分な点は要注意
NFTはインターネットに接続でき、必要な初期費用や登録などの準備を行うことができれば誰でも参加可能です。実際に小学生がデジタルアートをオークションに出品し高額で落札された事例もあります。
しかし、近年急激に注目されるようになったため、実は法的整備が整っている状態だとは言い難いです。そのため、NFTをより安全に利用するためにも、著作権や金融法など取引に関わる法律の基本的なところや、もしトラブルが起きた場合はどのように対処すればよいのか?を確認しておく必要があります。
NFTの特徴
①他と替えることができないものである
②安全・安心な取引を可能とする
③法的整備が不十分なため要注意
NFTでできること
NFTでできることは大きく分けて二つです。
①デジタル作品やクリエイターを守ること
従来のデジタルアートはしばしば著作権の侵害という問題にさらされていました。例えば映画やデジタル漫画の海賊版がその一例です。著作者の許可なく勝手にデータを利用することは犯罪であり、5年以下の懲役または500万以下の罰金などの処罰が下される可能性があります。
このような著作権侵害を防ぎ、デジタル作品やクリエイターを守ること、より安全・安心な取引をインターネット上で行うことを可能にすることなどを目的としてブロックチェーン技術を用いたNFTは開発されました。
②収益を得ること
「NFTは何がすごいのか」で詳細は述べましたが、NFTを活用することは収益を出すことがに繋がります。方法は主に三つで、「①NFT関連の暗号資産に投資する」「②デジタル作品を制作して販売する」「③購入したNFTを販売し、価格差益を得る」ことです。
NFTの活用により高額の利益を出すことができた事例もニュースとして過去に挙がっていますので、興味があればぜひ調べてみてください。
NFTでできること
①作品やクリエイターの権利を守る
②収益を生み出す
NFTの事例
NFTアート
絵画、写真、イラスト、VR、音楽、電子印鑑など世界中で幅広い分野のNFTアートが人気となっています。特に従来のデジタルアートではクリエイターの著作権問題があったため、NFTの安全性や二次流通でも収益が得られる仕組みは非常に注目が集まりました。
NFTゲーム
NFTが世に出たきっかけとなったのがNFTゲームです。メタバースやファッション業界とコラボしたNFTゲームもあり、育成、アドベンチャー、バトル、シミュレーションなど様々な種類のゲームが増えています。ゲームを始める前の初期投資が必要だったり、ゲームとしてのクオリティーの低さが課題だといわれてはいるものの、NFTゲームもゲームを通じて収益を出すことができる仕組みのため、非常に多くのゲーマーが参加しています。
NFTトレーディングカード
スポーツ選手やアイドルなどのトレーディングカードもNFTのデータに基づいて取引されています。ブロックチェーン上に固有データとして著名人の写真が記録されているトレーディングカードはゲームとして楽しむことができたり、コレクションしたりすることが可能です。唯一無二の価値を証明できるNFTのため、需要が高く、非常に人気です。
NFTの市場性
NFT市場は今後も成長が見込まれます。アートやゲーム分野では多くのクリエイターや企業が参入しており、これからも需要が高まることでしょう。それによりNFTの価値が上がるため伸びしろは大きいです。
一方で、法的整備が不十分、ガス代(取引時に発生する手数料)の高騰、環境破壊問題といったような課題点もあります。さらにNFTが成長していくうえで解決することは必至になるため、この問題と向き合いながらどのように成長していくかは引き続き注目すべきポイントです。